嫌な思考や感情は無理に頭の中から消そうとしないほうがいい

「自分は変だ」「自分は劣っている」「相手を不快にしているかもしれない」「相手に避けられている」といった嫌な考えや感情が浮かんできたことはありませんか?

人目を気にする私たちは、他人と接触する場面でこういったことを考えがちです。

しかし、こういった考えを無理に抑えよう・頭から消そうとすると余計にそれが増大することが研究で分かっています。(Wegner, D.M. 1994. Ironic process of mental control. Psychological Review 101)

では、ちょっとした実験をしてみましょう。

  1. まず1分間、「金色の電車」について想像してください。それはどんな形で何両編成でしょうか。窓はどこについていてドアはどれくらいの大きさでしょうか。具体的に頭の中で描いてみてください。
  2. 次に、1分間「金色の電車」について出来る限り考えないようにしてください。「金色の電車」以外なら何を考えても構いません。
  3. 1分経ったら、この間に何度「金色の電車」を考えてしまったか回数を記録してください。(以後これをA回とします。)
  4. では、もう1分間、今度は何を考えてもいい時間を設けてください。「金色の電車」でもなんでも好きなように考えられます。
  5. 1分経ったら、今回も同じように「金色の電車」を考えた回数を記録してください。(以後これをB回とします。)

さて、いかがでしょうか。Aの回数とBの回数では、どちらが多くなったでしょうか。おそらく、Bの回数>Aの回数となったのではないでしょうか。考えるのを我慢した後に自由な時間が与えられると、爆発的に抑制されていた思考が増大することを実感できたのではないでしょうか。

日常生活で遭遇する「自分は変だ」「自分は劣っている」「相手を不快にしているかもしれない」「相手に避けられている」といった嫌な思考や感情も同様です。無理に抑え込もうとすると、家に帰った時やふとした瞬間に、延々と嫌な考えや感情がフラッシュバックしてくる状態を引き起こしてしまいます。嫌な思考や感情をあなたにもたらした出来事自体が過ぎ去っても、フラッシュバックが泥沼のようにあなたの人生にへばりついてくるのです。

そこで、こういった泥沼に陥らぬよう、筆者は不安な気持ちや心の苦痛と”共に”社会生活を送ることをお勧めしています。

具体的な方法は以下の記事を参照してください。

人目が気になって「自分は変だ」と気持ちが落ち着かないときの対処法

不安や心理的な苦痛と”共に”社会生活を送るという方法に医学的な裏付けはあるのか

マスクや帽子・伊達メガネがないと落ち着かないのは「体験の回避」(その1)