「他人の目が気になる人へ」という精神科医の水島広子さんが書いた本に、「まな板の上の鯉」という表現が出てきます。
「他人の目」を気にするということは、自分を「まな板の上の鯉」にするということです。つまり、人からの評価に自分の価値を委ねきってしまうということなのです。
自分の形を整えて、あとは相手の評価を待つ。
少しでも不安な要素があると、また自分の形を整えることを考える。
そしてその後はまた相手の評価を待つ。こんな生き方をしていたら疲れますし、どんどん力を失っていってしまいます。
人目が気になる方には心当たりのある話ではないでしょうか?
私はこれを読んだときドキッとしたことを覚えています。あまりにも自分に当てはまりすぎていたからです。人目が気になる要因は様々ですが、特に容姿にコンプレックスを抱えている方は「まな板の上の鯉」になってしまいがちではないかと思います。
また、「お化粧をしなければいけない」「オシャレでなくてはいけない」といったような容姿について社会的に同質化圧力を受けやすい女性も「まな板の上の鯉」になりやすいかもしれません。
この「まな板の上の鯉」状態を引き起こす「他人の目が気になる心」を癒す方法として、現役の精神科医でもある筆者の水島広子さんは対人関係療法という治療法を提唱しています。
対人関係療法は「リアルな人間関係を通じて、ありのままの自分が認められる経験を積み重ねる」ことで、他人の評価に依存しない自分が見えてくるというものです。
具体的にはお医者さんや臨床心理士さんとの対話や患者さん同士でのグループワークといった形で行うようです。
「不安や苦痛と”ともに”自分のやりたいことに向かって社会生活を送る」というACTの方法論を実践している私からしても、医師や家族・友人に自分の感じ方を認めてもらうという経験はたしかに心の支えになるなという実感があります。(ACTによって「まな板の上の鯉」状態をどう扱っていくかは今後記事にする予定です。)
「プチ・トラウマ」など興味深い概念がいくつも出てくる本書は、また折に触れて紹介したいと思います。