人混みのある場所にいると想像してください。
人目が気になるあなたはどういう気分になるでしょうか。「ソワソワした気持ち」「落ち着かない気持ち」が波のように押し寄せてくるかもしれません。
そんな状態でふと頭に「やっぱり私は人目が苦手なのだ」との思いが浮かびます。あなたはどうするでしょうか?
おそらくその場を立ち去ってしまうでしょう。不安な気持ちや嫌な気持ちは一刻も早く消し去りたいからです。
認知的フュージョン
実はこの場面において、認知的フュージョンが生じています。認知的フュージョンとは思考と体験を混同してしまう状態を指します。
冷静になってこの状況を見つめてみると、実際に体験しているのは
- ソワソワした気持ち
- 落ち着かない気持ち
- 「私は人目が苦手」という思いが頭に浮かぶ
この3つです。
しかしそこで思考が介入します。
- 「私は人目が苦手」という思いは正しい
ここで、本来体験であった「私は人目が苦手という思い」は「正しい」という思考と混ざりあい、あたかも事実であるかのように錯覚してしまいます。
その場を立ち去ってしまったということは、この事後的に思考が評価するプロセスに無自覚であり、認知的フュージョンを起こしてしまったということになります。
認知的フュージョンを防ぐには
では、認知的フュージョンに陥らないようにする方法はあるのでしょうか。筆者はデタッチメントとマインドフルネスの活用をおすすめします。(詳しくはこちらを参照してください:人目が気になって「自分は変だ」と気持ちが落ち着かないときの対処法)
デタッチメントとは、上記の例でいえば、目の前の人混みを「私は人目が苦手」という思いを通じて見るのではなく、目の前の人混みと思い(私は人目が苦手)を同じ距離で並べて見るという心的な態度のことです。
一方、マインドフルネスとは、「ソワソワした気持ち」「落ち着かない気持ち」「私は人目が苦手という思い」という主に3つしか感じていなかった状態から、その場で感じられるあらゆるもの(足の裏の感覚、行きかう人々の声、スマホが鳴る音、自動車の騒音、頬を撫でる風、自らの呼吸など)をキャッチするという心的な態度のことです。
不安な気持ちや苦痛を心が感じているときは、認知的フュージョンを起こしやすい状態と言えます。そんな時にこそ積極的にデタッチメントとマインドフルネスを活用してください。